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教員の働き方改革・給特法改正の“生活への影響”——部活・行事・連絡体制はこう変わる

「先生の残業が減ると、うちの子の学校生活はどう変わるのか」。そう尋ねる保護者の声が、この夏いっきに増えました。2025 年 6 月に給特法の改正が成立し、働き方改革は“お願い”から“仕組み”へ。電話や行事の運営、部活動の担い手など、家庭の体感に直結する項目が動き出しています。本稿では、変わるポイントを生活目線で整理し、今日からの準備を提案します。
何が決まった?——改革の骨子を生活目線で三行要約
第一に、各教育委員会に業務量管理と健康確保の計画を作り、公表することが義務化されました。勤務時間の「見える化」を前提に、月の時間外在校等時間を段階的に減らす目標が示され、保護者にも方針が共有されます。
第二に、学校運営の要として「主務教諭」が新設され、校内の調整力を高めます。これにより、連絡・行事の段取りが属人的にならず、学年全体での分担が進みます。学級担任への手当加算も制度化され、担任業務の負荷を見直す土台が整います。
第三に、時間外手当の代替である教職調整額は 10 % へ(段階的引上げ)。処遇改善と同時に、業務の線引きと分担の再設計が求められます。学校だけで抱えず、地域や保護者と役割を分かち合う発想に舵が切られました。
家庭に起きる“具体的な変化”——連絡・行事・部活動
まず連絡体制です。電話は原則として定時内、緊急時は一斉メールや学校ポータルが軸になります。長時間の個別相談は面談枠で調整、記録が残るツール活用が進みます。SNS での即時対応は避け、公式の窓口へ一本化される見込みです。
次に行事運営。授業時数や教員配置を確保するため、平日夕刻への集約や所要時間の短縮、役割の簡素化が増えます。写真販売・広報などは事務や外部支援員が担い、教師は学習活動に時間を振り向けます。ボランティア募集は早めに告知され、参加方法が明確になります。
部活動は地域クラブへの移行が加速します。休日活動は学校外の団体が受け持つケースが拡大し、移動手段・費用・保険の確認が家庭の新しい“準備項目”になります。学校の顧問は学期内の指導や連絡調整に集中し、土日の運営は地域と分担する形です。
わが家の「準備チェックリスト」——今日からできる 6 つ
① 連絡先の整理:学校公式メール・ポータルの受信設定を見直し、緊急連絡と通常連絡の通知ルールを家族で共有しましょう。スクリーンショットで保管しておくと安心です。
② 相談の段取り:学習・生活の相談は「要点 3 点+事前資料」で簡潔に。面談予約フォームや連絡帳を使い、記録に残る形を選びます。感情的なやり取りは避け、時間内の相談を心がけます。
③ 行事の所要と役割:保護者会や授業参観の時間短縮に備え、配布資料を事前に読み、質問は箇条書きで。PTA の役割は「できる範囲で」無理なく参加し、欠席時は後日資料でフォローします。
④ 部活動の移行確認:所属クラブが学校型か地域型か、費用・保険・練習会場・帰宅手段を一覧化。安全面は送迎同乗のルールや集合解散の時刻まで具体化しておきます。
⑤ 家庭学習の固定化:活動時間帯の変化に合わせ、平日 30 分×2 コマの学習習慣を固定。タスクは「学校課題→弱点 1 題→英単語 10 個」の順で回すと、疲れた日でも崩れにくくなります。
⑥ 学校への協力:登下校の見守りや行事当日の受付など、学校以外が担える部分は地域で支える発想に。“学校ができないこともある”という前提を共有し、建設的な関係を保ちましょう。
ひと目で分かる——主な変更点と家庭の行動
項目 | いつから | 生活上の変化 | 家庭の行動 |
---|---|---|---|
業務量管理の計画公表 | 2025 年度以降 | 連絡・行事の運用方針が明文化 | 学校だよりやサイトで方針を確認 |
主務教諭の新設 | 2026 年度予定 | 学年・行事の調整が組織的に | 問い合わせ窓口を学年単位で把握 |
教職調整額の引上げ | 2026 年以降段階的 | 業務の線引きと分担再設計が加速 | 学校外の担い手活用に理解を示す |
部活動の地域移行 | 2025〜2026 年に拡大 | 休日活動は地域クラブ中心に | 費用・保険・移動の手配を前倒し |
まとめ——学校と家庭が“役割を言語化”する時代へ
働き方改革は、先生の負担軽減だけでなく、子どもに向き合う時間を増やすための土台づくりです。家庭は、連絡の作法を整え、地域クラブやボランティアで学校外の力を足す。学校は、方針と窓口を分かりやすく示す。両輪がかみ合うほど、学びは安定します。保護者の皆さまは、まず連絡先と面談の段取りから整えていきましょう。
参照リンク(一次資料・公式)
・「給特法等の一部を改正する法律案」成立について(文部科学省 今日の出来事)(アクセス日:2025-09-05)
・教師を取り巻く環境整備(働き方改革・指導運営体制・処遇改善)(アクセス日:2025-09-05)
・地域・保護者の皆様へ(広報チラシ PDF)—相談は定時内・役割分担などのポイント(アクセス日:2025-09-05)
・令和 7 年給特法等改正案をめぐる国会論議(参議院 調査室資料 PDF)—目標値や電話対応の縮減等(アクセス日:2025-09-05)
・運動部活動の地域連携・地域クラブ移行(スポーツ庁)(アクセス日:2025-09-05)
※リンク先は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。
◎『KATEKYO学院・山形県家庭教師協会』では、学校の連絡体制や部活動の変化に合わせた学習計画づくり、面談の要点整理、地域クラブ移行期の時間割調整まで、家庭の実務を丸ごとサポートします。個別相談では、科目別の優先順位と家庭学習の固定メニューを一緒に設計します。
担当:プロ教師 近江直樹