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山形県の教育を考える:2025年全国学力テストから見えた課題と希望

「数字の向こうにある子どもの姿を見逃さない」——これは教育現場でいつも耳にする言葉です。2025年4月に実施された全国学力・学習状況調査(以下、全国学力テスト)の結果が公表され、山形県の教育は新たな課題と可能性を同時に示されました。今回は理科で光が差し、算数・数学で警鐘が鳴るという対照的な結果を軸に、最新の公表資料を基に現状を精査し、次の一手を考えます。
数字が語る光と影(最新版)
山形県教育委員会の公表資料に基づき、主要教科の県平均と全国平均を抜粋しました。理科は小中とも全国水準以上(小は正答率、中特に理科はIRTスコア)で健闘。一方、算数・数学は依然として全国平均を下回ります。差の推移では小学校算数は全国との差が縮小傾向である一方、中学校数学は差が拡大している点が見逃せません。
教科・学年 | 山形県 | 全国平均 | 差異 |
---|---|---|---|
小学校 理科 | 58 % | 57.1 % | +0.9 pt |
中学校 理科 | 504 点 | 503 点 | +1 点 |
小学校 算数 | 55 % | 58.0 % | -3.0 pt |
中学校 数学 | 45 % | 48.3 % | -3.3 pt |
※理科(中)は IRT スコア(基準 500)、その他は平均正答率(%)。
理科の好成績は、自然観察や実験を軸にした体験学習が成果に結びついている可能性を示唆します。算数・数学では、図形の性質や用語理解、式や言葉での説明に課題が指摘されており、学ぶ内容の「意味づけ」と「表現」をどう鍛えるかが鍵です。
子どもたちの声が示す「学びの土壌」
質問紙では、山形の子どもたちが「授業が分かる」「勉強が好き」と答える割合が概ね良好でした。友人関係や学校生活の満足度も高く、心理的安心感の高い学習環境が形成されています。理科の伸長は、この土壌の上に実践が根付いた結果と見られ、算数・数学にも展開できる素地があります。
算数・数学の課題にどう挑むか
1. 計算の自動化×ことばで説明
反復で計算を自動化しつつ、面積や割合などの求め方を式や言葉で説明する練習を日常化。説明の型(結論→根拠→図示)を共有すれば、思考の見える化が進みます。
2. 「地域×データ」で数学化
さくらんぼの収穫予測や、冬の除雪コストの試算、まみがさき(馬見ヶ崎)川の水質データのグラフ化など、身近な数量を扱う課題に置き換えて、数学を自分ごと化。タブレット表計算での可視化は理解を後押しします。
3. 授業改善の循環とICTの活用
県の学力向上支援チームが進める「公開授業→協議→再授業」の循環を数学でも強化。ICT機器の活用頻度・使い方に課題がある現状を踏まえ、評価で使う→授業で使う→家庭学習へ橋渡しの順で活用場面を設計し、教員研修で事例を水平展開します。
理科の成功体験を横展開する
理科では、基礎知識の定着と観察・実験を通じた理解が奏功しました。数学でも、「なぜそうなるのか」を体感して理解する場面を増やします。例として、雪の堆積量から屋根荷重を見積もる課題、農業経営の収支表から一次関数・割合・統計を横断する課題など、地場産業のリアルな数値を教材化すると効果的です。
まとめ:山形らしい未来へ
学力テストは厳しい現実を映し出すと同時に、改善のヒントを与える鏡です。山形は温かな学習環境と豊かな地域資源という強みを持ちます。理科で示した手応えを算数・数学へ横展開し、ICTを実用的に組み合わせれば、「山形で学んでよかった」と言える学びをさらに磨けます。子ども・保護者・学校・地域が同じ方向を向き、着実に前へ進みましょう。
参照リンク
- 山形県「令和7年度 全国学力・学習状況調査 結果について」(県サイト)(更新日:2025年8月1日、2025年8月8日アクセス)
- 山形県教育委員会「『令和7年度全国学力・学習状況調査』結果について」(PDF)(掲載日:不明、2025年8月8日アクセス)
- 文部科学省「令和7年度全国学力・学習状況調査 結果公表①のポイント」(PDF)(掲載日:2025年7月14日、2025年8月8日アクセス)
- 国立教育政策研究所「令和7年度 全国学力・学習状況調査 報告書・調査結果資料」(掲載日:不明、2025年8月8日アクセス)
※リンク先は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。
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担当:プロ教師 近江直樹